アナログゲームブランド・ドロッセルマイヤーズの創立15周年を記念したイベント「ドロッセルマイヤーズ15周年祭」が2026年10月4日,LOFT9 Shibuyaで開催された。
2011年に中野ブロードウェイで“創作ボードゲームショップ”としてスタートし,当初から「Stamps」「アダムとイヴ」などのゲーム開発を行ってきたドロッセルマイヤーズだが,現在はさまざまな企業ブランドのプロデュースやディレクションを手掛けるボードゲームメーカーとして活動している。
ステージには,そんなドロッセルマイヤーズの代表を務める渡辺範明氏に加え,オインクゲームズ代表の佐々木隼氏がゲストとして登壇。これまでの経験をもとにしたトークに続き,ドロッセルマイヤーズの15周年記念作品「ドロッセルマイヤーズ・ヒストリア」の大人数プレイなども行われた。本稿ではこのイベントの模様をレポートする。
ステージでのトークは,両者がボードゲームづくりに向かうまでの話から始まった。それによると,渡辺氏と佐々木氏はそれぞれ,創業以前からデジタルゲーム開発に携わっていたという。
2人がボードゲームに深く関わるようになったきっかけは,2006年に開店した「すごろくや」だった。渡辺氏は,そこで購入した「ごきぶりポーカー」などを遊んだ結果,「自分たちが作りたいものもこちらにある」と確信したという。
以下は会場で公開されたドロッセルマイヤーズの年表だ。実店舗の開店から,企業と組んだゲームづくり,ラジオや書籍,漫画へと活動範囲が広がっていった様子が見て取れる。
ドロッセルマイヤーズが“店舗”から始まったのは「売り場の採用判断に左右されず商品を作るためだった」と渡辺氏は語った。 しかし,来客対応と制作の両立は難しく,自店だけで買える新作を集客につなげたい気持ちと,メーカーとしてほかの店にも作品を届けたい気持ちがぶつかる悩みもあったという。その結果として実店舗は2013年に閉店し,活動の中心は制作へと移っていった。
それでも,店舗の経験は財産になった。立地上,ボードゲームを目当てにしていない人が訪れる環境で直接コミュニケーションをとる経験は,来店者の関心を購買につなげる感覚を育てたそうだ。制作と販売の現場に触れた経験が,現在の仕事にも生きているとのこと。
転機となったのは,日本科学未来館の常設展示「未来逆算思考」だった。渡辺氏はそこで,自らの経験を“ボードゲーム市場の外”に広げる仕事に自らの役割を見いだした。結果として,現在の形態に近い活動が始まったのだという。
関連記事
企業と組んで活動するにあたり重要な要素として,渡辺氏は“シリーズ”の概念を提示。企業の規模を考慮すると,ボードゲーム単作を企画として通すのは難しいが,複数の作品を用いることで一連のコンテンツとして成立させられる,という考え方だ。
単作ではどうしてもギャンブルになる部分があるが,連作であれば作品ごとに特徴を付けやすく,反応を見ながらシリーズを育てられるうえ,良いゲームを作るという信頼を次作につなげやすい。 以前はこういった発想がなかったとのことで,渡辺氏は「かつて企業に所属していた頃の自分に教えてあげたい」とも話していた。
関連記事
続いて,未来に向けての取り組みも語られた。ここで紹介されたのは,同社が新たに始めた電子コミックの自社レーベル「ドロッセルマイヤーズ・コミックス」だ。
Kindleでの単話販売で,月いちペースの連載が続いていく同レーベルでは,渡辺氏が原作を務める漫画が展開されているが,制作にあたっては「参加する漫画家が何を描きたいか」を確認しつつ,ともに企画を練る方式を採っているとのこと。 渡辺氏は,自分自身を「やりたいことをヒアリングして,翻訳して世に送り出すのが得意」と分析し,今はそれに合った活動をしているという。
一方の佐々木氏は,他者の干渉を受けずにゲームを作れる環境を重視しており,両者のものづくりへの向き合い方は大きく異なっている。近い地点から出発しているにもかかわらず,同じ業界内でそれぞれが違う方向性で成功しているのは,ある意味面白い状況といえるかもしれない。
今後の展開としては,渡辺氏からボードゲーム「Kaiju on the Earth」シリーズの本編第5作,第6作の発売元が決定したことも明らかにされた。具体的な社名はまだ公表できないとのことだが,2027年に新展開があるという。ファンは楽しみにしておこう。
関連記事
イベント中盤には,15周年記念作品「ドロッセルマイヤーズ・ヒストリア」を使った大人数プレイが実施された。
本作は,佐藤雄介氏が手掛けた2人用対戦ゲーム「プリズンバトル」をベースに,要素を大幅に拡張したカードゲームだ。ステージには佐藤氏も登壇し,渡辺氏とともに制作の経緯やルールの解説を行った。
プレイ人数にはかなりの幅があり,2人用のVSモード,3〜6人用の勝ち抜きモード,7〜50人用のイベントモードが収録されている。 イベントモードでは複数の対戦卓を渡り歩くが,対戦そのものは1対1の繰り返しだ。今回は来場者が約100人だったため,3箱を使って各プレイヤーに「異能者カード」を3枚ずつ配る会場独自の処理が用いられた。
基本ルールは非常にシンプルだ。各プレイヤーは数字(1〜5)の書かれたカードを手札として持ち,1枚ずつ伏せて出し,同時に公開して数字比べをする。数字の大きいプレイヤーがラウンドを獲得し,先に3ラウンドを取れば勝利である。
ただし,各プレイヤーは特殊能力を備えた「異能者カード」を持ち,任意のタイミングで公開して発動できる。これらの能力は強烈なものばかりで,単純な数字比べが一気に奥深い読み合いへと姿を変える仕組みになっている。
なかなか難しいのは,一度公開した異能者カードは,伏せ直せないということだ。イベントモードでは対戦の様子をほかのプレイヤーに見られるので,早々に姿を晒すとどんな強い能力も対策されてしまう可能性がある。まさに,漫画の異能力バトルのような戦いを,極めてシンプルなルールのうえで楽しめるわけだ。
筆者は実際に出くわさなかったものの,なかには「相手がプレイ中に笑ったら脱落」といった一発芸的なものもあるようで,よほど警戒しなければノーダメージで戦い抜くのは難しい。とにかく能力がユニークなので,実際のプレイでも「そんなこと起こるの!?」といった声が各所から上がっていた。
本作は来たる10月17日,18日に開催される「ゲームマーケット2026秋」で発売される予定となっている。大人数が集まるイベントで遊べるゲームはあまり多くないので,そういった作品を求めている人にとっては唯一無二のタイトルになるかもしれない。
Extracted and lightly reformatted for readability. · Source: ja
