「Apple Arcade」は,Appleが月額900円(税込)でiPhone / iPad / Mac / Apple TV / Apple Vision向けに提供している,ゲームのサブスクリプションサービスだ。 この連載では,広告やゲーム内課金なしでプレイできる200種類以上のタイトルの中から,4Gamerがチョイスした作品を紹介していく。

第70回では,Humble Bundleが配信する「Unpacking+」を紹介しよう。

引っ越したばかりの,段ボールが積まれた家。プレイヤーは,それらを開け,中の荷物を部屋に収めていく。このゲームですることは,ただそれだけだ。

登場するのは,ある女性の部屋。1997年からゲームはスタートし,彼女の使う子供部屋の荷解きから始まり,8回の引っ越しをこなしていく。生活必需品や手放すことのできない思い出の品を限られたスペースに収納し,彼女の新しいすみかを作り上げていくのだ。

どこに何を置いたりしまったりするかは,ほとんどがプレイヤーに任せられているが,例えばトイレットペーパーを寝室に置いたり,食器をトイレに置いたりと,あまりにも常識から外れた配置はできない。また,一部ではあるが,置くべき場所が決まっているものもある。

子供部屋に置かれた段ボールから出てくるのは,サッカーボールやトロフィー,鍵付き日記帳にルービックキューブ。ヒーローのフィギュア,どこかで見たようなキャラのぬいぐるみ。多趣味で活発な女の子なのだろうと想像できる。 憧れの自室を手に入れた彼女の希望に満ちた顔が見えるようだ。

「ここにゲーム機があったら遊びやすいかも」「本と遊び道具はここにまとめて,空いたところにオブジェを置こう」など,彼女にとって暮らしやすく美しい配置を考えるのはとても楽しい。もちろん,活発な子供部屋をイメージして,あえて乱雑に配置してみても,部屋にいい味が出る。

だが,少なくともプレイの最中に,部屋の中で彼女自身の姿を見ることはない。私たちが見るのは,彼女が引っ越した直後の部屋と,そこに置かれた荷物だけである。 引っ越しを重ねるたび,彼女のライフステージは変化していく。部屋の構成や,パッキングされた荷物の増減。そこから,親元を離れたことや仕事の内容,今大事にしていること,置かれた状況などが浮かび上がってくる。 本作の仕掛けはさりげないながらも,私たちの心に強い印象を残す。

それは,例えば彼女が子供のころに買ってもらったゲーム機や本を,ずっと大事にしていることを知る瞬間。あるいは,あまり整理されていないコスメ類の数々に,彼女の性格を見いだしてふふっと笑ってしまうこと。 段ボールの中に,別の部屋に置くべきものが唐突に入っているのを見て「きっと入れ忘れたことにだいぶ後になって気付き,慌てて荷造りしたんだろうな」と想像を巡らせること。 小さな個性を見いだし,静かに積み重ねていくことで,私たちは顔も知らぬ彼女に,いつの間にか深く感情移入しているのである。

1度めの荷解きでは小さな子どもだった彼女が,8度めの引っ越しを終わらせるころには,たくさんの経験を積んだ大人として,大きな決断をする。それはいったい何なのか。“荷解き”をしながら,のんびりゆっくり,味わってみてはいかがだろう。

「荷解き」という過程そのものが物語を紡ぐ。その控えめながらも独創的なフックには,確かな存在感がある。 そして,「モノ」に宿る想い,それが無言で語るパワーに,改めて気付かせてくれるのだ。

※本記事には一部アフィリエイトリンクを含みます。

Extracted and lightly reformatted for readability. · Source: ja