タイ・バンコクのQueen Sirikit National Convention Centerで開催中のイベント「gamescom asia x Thailand Game Show 2026」。2日目となる2026年10月30日,「Roblox」(PC / PS5 / Xbox Series X|S / PS4 / Xbox One / Meta Quest / iOS / Android)でインターナショナル担当バイスプレジデントを務めるZhen Fang氏が講演「The Next Generation Won't Just Play Games」を行った。Fang氏はアメリカを拠点にしながら1年の多くをアジアで過ごしているという。

講演はRobloxで遊ばれているゲームを紹介する映像から始まった。2026年9月30日までの四半期に,世界のプレイヤーがRobloxで過ごした時間は340億時間に達したそうだ。

クリエイターが作ったゲームは,本や映画,音楽と同じように,すでに大衆文化の一部になっているという。Roblox社内には,「世界にはもっと遊びが必要だ」という標語があり,遊びは子供だけでなく誰にとっても欠かせないものだと認識しているそうだ。

そのためにRobloxが掲げるのは,遊ぶ(Play),作る(Build),育てる(Grow)の3つだ。遊び方を広げ,AIを使った制作ツールで作れるものを増やし,増えたゲームをプレイヤーに見つけてもらえるようにする,という順番で話は進んだ。

Robloxでの遊びはゲームそのものだけでは終わらない,とFang氏は言う。遊ぶ,観る,チャットする,見つける,作るといったことが友達どうしのあいだで同時に起きるのがRobloxらしさで,遊びを広げるために5つの改良を進めているそうだ。

1つめは,クリエイターが自分のゲームを単体のアプリとして,モバイル,PC,コンシューマ機に出せるようにすることだ。第1段階は2026年内に始まり,来年にかけて広げていく。

2つめはブラウザでのプレイで,年内にはアプリのインストールなしでChromeからゲームに参加できるようになる。共有リンクやSNS,YouTubeなど,どこに貼られたリンクからでもプレイボタンを押せば遊べるようになるという。

3つめはオフラインプレイだ。飛行機の中や電波の届きにくい場所でも遊べるようにするもので,対応するかどうかは開発者が選ぶ。スライドには,2027年半ばに提供を始め,それに先立って早期アクセスを行うと書かれていた。

4つめは,フレンドとのチャットタブがゲームをまたいで付いてくるようになること。別のゲームに移っても会話が途切れないので,一緒に遊ぶ段取りがつけやすくなる。

5つめは2Dゲームへの対応だ。自分の年代だと2Dゲームには思い入れがある,とFang氏は冗談めかして語っていた。

作る側の話で中心になったのは,Robloxアプリに新しく加わったタブ「Build」だ。「Roblox Studio」を使わず,普段使っている言葉で指示するだけでゲームを作れる機能で,PCがなくてもスマートフォンだけで制作できる。

遊べる人なら誰でも作れるようにする,というのがBuildの狙いだ。現在はα版としてニュージーランド,シンガポール,セルビア,タイで提供されており,すでに50万人以上が試し,7万本を超えるゲームが公開されたという。

直近の四半期には,人気上位20本のうち2本がほぼAIだけで作られていたそうだ。アイデアが遊べるゲームになるまでの時間は劇的に縮まっていて,この流れはさらに加速するだろう,とFang氏は予想していた。

もう1つ紹介されたのは,テキストの指示と参考画像から,実際に動くゲームのレイアウトを作る機能だ。講演終盤のスライドでは「Scene Generator」と呼ばれており,作ったものはRoblox Studioに持ち込んで仕上げられる。

AIのおかげでゲームが速いペースで増えていくなら,作り手にとっては,自分のゲームをどうやって見つけてもらうかが問題になる。Robloxはホーム画面だけでなく,新しいタブの「Moments」やブラウザなど,あらゆる場所でプレイヤーの関心が高いゲームが表示されるようにしたいという。

Momentsは,ゲームプレイの動画を眺め,気になったらその場でプレイボタンを押して遊び始められる機能だ。アメリカなど一部の国で始まっており,ほかの地域にも順次広がる。動画に映ったアバターをタップして,身に着けているアイテムを買えるようにもなるそうだ。

Fang氏が興味深い数字として紹介したのは,毎週のおすすめ上位100本の40%が,直近3か月以内に作られたゲームだという話である。9月末にいちばん多くおすすめされていたゲーム10本のうち4本は,6月の時点でRobloxに存在しなかったことになる。

入れ替わりがそれだけ速いなら,新しく参入しても上位を狙える余地はあるのだろう。もっとも,AIで作られた大量のゲームと競わなければならないわけで,作り手にとっては良い話ばかりではないかもしれない。

収益化については,2013年にDevEx(Robloxの通貨を現金に換える制度)が始まって以来,クリエイターが得た金額が50億ドル(約7850億円)を超えたことが示された。そのうえで,年内から来年にかけて「Roblox Wallet」と「Roblox Card」の2つを導入するという。

Roblox Walletは提携する金融機関の口座と結び付いたもので,クリエイター向けのポータルであるCreator Hubから使う。保留期間が明けた収益は営業日ごとに支払われ,年内にアメリカのクリエイターへの提供を始め,2027年以降,そのほかの国へ広げる予定だ。

Roblox Cardは,Walletの残高を,カード払いに対応する店ならどこでも使えるようにするものだ。こちらは2027年に提供が始まる。

クリエイターの収入についても紹介された。2026年6月30日までの12か月間で,収入上位10組のクリエイターは平均で6570万ドル(約103億円),上位100組は1080万ドル(約17億円),上位1000組は140万ドル(約2億2000万円)を得ており,いずれも2020年と比べて3.6倍から4.3倍に伸びている。

プラットフォームは大きくなるほど上位の一握りに収入が偏りがちだが,Robloxでは全方位で伸びているという。しかし同じスライドの注記には,DevExに参加しているクリエイターは4万2000人以上で,収入の中央値は約1500ドル(約24万円)とも書かれており,上位と裾野の差はやはりかなり大きい。

話題はアジアに移った。スライドに出典として記されていたNewzooの調査によれば,アジア太平洋地域のゲーム市場規模は2025年に950億ドル(約14兆9000億円)で,世界のゲーム収益の47%を占めるという。

Robloxでも,2026年9月30日までの四半期に,同地域が世界のDAUの30%を占めた。この成長を受けて同社は東南アジアの体制を広げており,講演ではJoel Neo氏が東南アジア・オセアニア担当のマネージングディレクターに就任したことが発表された。拠点はシンガポールに置かれる。

日本は,Fang氏が有望で興味深い市場と呼んだ国の1つだ。直近の四半期のDAUは前年同期比で33%増えており,インドでも37%増えていた。

こうした成長を支えているのはクリエイターのコミュニティだとして,Fang氏はアジアのクリエイターを3組紹介した。1組めはタイのJINN KODEで,父と息子の2人で開発している。

息子のJinn氏は8歳のとき,コンピュータサイエンスを学んだ父親のAnutr氏からプログラミングを教わったという。

2人がタイの人気スナックブランドのために作った「Taro Roll Party」は,100万回以上訪問されている。タイの首相府から,こどもの日に向けたゲームの制作も任されたほか,タイ銀行と組んだ金融教育のゲームや,子供や保護者,教師に向けたRoblox Studioの講座なども手掛けているという。

2組めはベトナムのBao氏だ。6年生のときにRobloxに初めてふれ,試行錯誤しながらプログラミングと英語を独学で身に付けた。

作ったゲームがトップページに載り,DevExで初めて収入を得て,そのお金で両親を食事に連れて行ったそうだ。2025年にはスタジオを立ち上げ,現在はホーチミン市にオフィスを構えて9人のチームを率いている。

3組めはインドネシアのDAVA氏で,年長のプレイヤーに向けて作り込んだ,Robloxで増えつつあるタイプのゲームの例として紹介された。DAVA氏もプレイヤーから始めて開発を独学で覚え,ホラーゲーム「The Morgue Shift」をわずか2か月で作り上げた。

「The Morgue Shift」はインドネシアの民間伝承を取り入れながら,海外のプレイヤーにも通じる作りになっている。累計訪問数は1億8400万回,最大同時接続数は3000人に達したという。

Robloxは個々のクリエイターだけでなく,地域のコミュニティ向けイベントにも力を入れている。今年は12か国で17回のイベントを開き,そのうち6回がアジアだった。

東南アジアではタイ(4月),ベトナム(5月),インドネシア(8月)を巡るロードショーも開かれた。講演の翌日にもバンコクで数百人規模のイベントが予定されているという。

Fang氏は講演の終盤,Robloxでゲームを作ったことのない人は今夜アプリを開いてBuildタブを試してほしい,と会場に呼びかけた。ちなみにタイは,Buildを使える最初の国の1つだ。

Robloxは子供向けだと思われがちだが,いま最も伸びている利用者層は大人なのだという。アメリカでは18歳以上の課金額が18歳未満より50%多い。お金を持っているのは大人で,子供は親からもらうしかないのだから当然だ,とFang氏は冗談交じりに言った。

そうした新しい層に向けたゲームを増やすため,Robloxには2つの支援プログラムがある。Roblox Jumpstartは野心的なプロジェクトをRobloxで出したいスタジオ向けで,Roblox Incubatorはゲームを大きく育てたいクリエイターに6か月間のメンタリングを行うものだ。

Jinn氏もBao氏もDAVA氏も,最初はRobloxのプレイヤーだった。パブリッシャも予算もなく,無料で使えるツールで作り始めたのが今の若い作り手であり,講演タイトルの「次の世代はただ遊ぶだけではない」とは,そういう意味なのだという。

誰もがゲームを作れるようになると,大事になるのは流通と発見,本物の経済圏,最初から組み込まれた安全性だとFang氏は述べた。そして,Robloxで作ったものを世界が遊ぶ,という言葉で講演を締めくくった。

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